アンダーロココ唄語り:カメラ・オブスクーラ
2002年1月23日男の行く先には、なにもありませんでした。
ただまっくらな闇が広がっているだけでした。
地面がどこまで続いているのかもわからずに、
ただ歩いてゆきました。
目の前になにもないので、
男はたくさんのことを考えました。
昔、食べた砂糖菓子の味、
昔、見た永遠の空の色、
昔、あびた雨の温度、
昔、愛した女の涙、
昔のことを、男はたくさん考えました。
男は、闇のさきにそれらをさがそうとしましたが、
あいかわらず、何も見えないのでした。
思えばいつから、自分は歩いていたのだろう。
思えばいつから、ひとりだったのだろう。
男は、闇のさきに答えをさがそうとしましたが、
あいかわらず、何も判らないのでした。
闇の中を歩いていると、だんだん自分の姿がわからなくなってきます。
自分の姿を確かめようと、男は自分の胸をつかみました。
するとどうでしょう、ぬるりとしたものが手に触れました。
奇妙な液体をなめると、なまぐさい血の味がします。
男は、自分の腕をつかみました。
やはり、ぬるりとした感触が伝わります。
男は腹を、足を、背中をさぐりましたが、
やはり同じ手触りをおぼえるのでした。
男はようやく思い出しました。
「おれは血など流していない。
おれには何も見えない」
そうつぶやいた日から、男の世界は暗闇になったのです。
暗闇を歩いていると、自分の姿がわからなくなります。
けれど自分の姿を確かめるために、
男は自分の血にふれなければならないのでした。
それは、まぎれもない、男の今の姿なのでした。
男は涙を流しました。
それは、昔見た女の涙に似ていました。
「これは、おれだ」
そう言って男が、自分の身体を抱きしめた時、
太陽の光があたりを照らしました。
ただまっくらな闇が広がっているだけでした。
地面がどこまで続いているのかもわからずに、
ただ歩いてゆきました。
目の前になにもないので、
男はたくさんのことを考えました。
昔、食べた砂糖菓子の味、
昔、見た永遠の空の色、
昔、あびた雨の温度、
昔、愛した女の涙、
昔のことを、男はたくさん考えました。
男は、闇のさきにそれらをさがそうとしましたが、
あいかわらず、何も見えないのでした。
思えばいつから、自分は歩いていたのだろう。
思えばいつから、ひとりだったのだろう。
男は、闇のさきに答えをさがそうとしましたが、
あいかわらず、何も判らないのでした。
闇の中を歩いていると、だんだん自分の姿がわからなくなってきます。
自分の姿を確かめようと、男は自分の胸をつかみました。
するとどうでしょう、ぬるりとしたものが手に触れました。
奇妙な液体をなめると、なまぐさい血の味がします。
男は、自分の腕をつかみました。
やはり、ぬるりとした感触が伝わります。
男は腹を、足を、背中をさぐりましたが、
やはり同じ手触りをおぼえるのでした。
男はようやく思い出しました。
「おれは血など流していない。
おれには何も見えない」
そうつぶやいた日から、男の世界は暗闇になったのです。
暗闇を歩いていると、自分の姿がわからなくなります。
けれど自分の姿を確かめるために、
男は自分の血にふれなければならないのでした。
それは、まぎれもない、男の今の姿なのでした。
男は涙を流しました。
それは、昔見た女の涙に似ていました。
「これは、おれだ」
そう言って男が、自分の身体を抱きしめた時、
太陽の光があたりを照らしました。
コメント