遠い国

2003年9月14日
ここへおいで
きみが凍える理由はなにもない
きみが そこに残る理由はなにもない
どうか 戻って
ここまで戻っておいで

背中に突き刺さる刃が
きみの髪をなであげてゆく
痛みを受け入れたばかりの白い皮膚は
そのまま赤く焼かれてゆく
なにもないところまで
すぐさま 飛び込んでしまいそうな月が
きみの肩先を照らす
連れ去ろうとしているのか
誰にもわからないけれど

きみが 取り残される理由はなにもない
ひとが孤独だと感じるときは
かつて 孤独でないときを知っているから
甘い汁はけっしてきみをなぐさめやしない
優しさも 思いやりも いたわりも
きみの傷を癒すためのものではないが
すべてが 現実におとずれたもののすべてが
ただきみを導いてゆく

戻っておいで
あたたかい地面すらない世界を
ひとり歩かずに

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