CHURCH

2002年12月24日
薄れゆく霧のように その声が通り過ぎて
今はただなにも見えず わたしはさまようけど
いつか叶えるだろう ささやかな願いを
今はもう離れてゆく わたしたちはどこまでも

遠い日に夢見たのは この手にあるひかり
触れ合えば消えてしまう ちいさなひかりだけど
しずかな波のように 汚れた身体を流すだろう

遠く離れてゆく
わたしたちはいつのまにか
なにもおそれずに 長い時をすごしていた

とても ちいさなことで喜び合った

今は離れてゆく わたしたちは遠く
わたしはこの先もずっと かすかなひかりを抱いてゆく

もうなにも聞こえない
わたしたちは気がつけば 暗闇の中にいたけれど
わたしは歩いてゆくだろう
おなじ時代をあなたと生きた

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石川風の、クリスマスの歌ということで。
どこがどうクリスマスなのかわからないかもしれませんが(笑)
久しぶりにメロディのある詩をのせてみました。

ドロップ

2002年12月20日
大丈夫だよ
僕はなぜか
冷たい言葉のほうが
安心するようだから

甘いものは
このちいさな缶の中身で
すでに満たされているようだから

霧隠れ

2002年12月18日
枯れ葉をふみしめて歩く
乾いた土のにおいがして僕は
ほんのすこし
寂寞とした森の中を歩いてみる
忘れたものがここにある
なにかを取り戻そうとして
すでに 求めていないことに気づく
なにかにすがりつこうとして
すでに 必要でないことに気づく
なにもかもが不安定のこの足取りで
それでも僕は
歩いていることにふと気づく

日が沈む
けれど夜が深まったとして
僕は
電池の切れかけた懐中電灯を
まだ持っていることを知る
それはいつか消えてしまうが
町に降りれば
たくさんの明かりがあることを知っている

偽りなきもの

2002年12月16日
僕を救ってくれ

愛情も
ぬくもりもいらない
慰めや優しさは
僕にとって
塵ほどの価値もない

僕を救えるのは
揺るぎない真実
ただそれだけ

たとえ苦しみあえごうと
たたみかける過酷な真実
僕を救えるものは
ただそれだけ

天蓋ゆりかご

2002年12月14日
遠いところにいるのね
あんなにも近く
あんなにもあたたかく
この場所にいたのに
わたしがここでゆっくりと
すわっていることができなかった
だからなのね

後悔しているわけじゃない
わたしはいつもこうして
ゆっくりと枯渇する

その寝床はあくまでも
目覚めるための場所
どんなに大切に守られたとして
私の中にはぬぐい去れぬ
野生の血が流れている

とても素敵な場所だった
まるでずっと昔から
そこで眠っていたかのような

永劫の地

2002年12月12日
絶え間なく続くのよ
この パラダイスのような地獄は
わたしは今
おかしくてたまらないの
バカみたいなこの瞬間
煮えくり返るほど愉快なこのひととき
わたしは今
すべてのものを壊したくて
うずうずしているのよ
知ったかぶりをして世をわたる
うそつきの仮面は百万くらい持っている
でも それでなにが悪いの
真実を見抜いていると錯覚する
薄汚いゴミは山ほどいるのよ

まるで待ち人を待ちすぎて疲れ果てたかのような一日をすごしましたわたくしは、
どうにもおさまりがつかずに手にした花束をなんとかひもでくくりつけて、
赤い色が目につくのもかまわずにいっしょくたにまとめた花の幻想的な匂いを、
ただ無心に迷いもなく吸い込んでいたのですが、
涙が落ちて落ちて落ちて赤い花の中につるつるとすべりこんでゆくので、
やはりどうしても花束をまき散らさずにはいられないのです。
あなたはいずこ、いまはどこか遠い海のむこうにいて、
きっとわたくしのことなど忘れているのでございましょう、
なぜなら空をとぶ小さな鳥が一羽、
どうしてもわたくしのそばに降り立ってはくれないからなのです。
目を覚ませば海、巨大な海原のなかにわたくしは一人旅に出て、
果てない世界をたった一艘の小さな船でさまよっているのです。
助けてください、あなた。
これはわたくしのくだらないひとりごとでございますから、
この涙に濡れた薄い手紙の封を閉じても、
わたくしはこの封筒を海に浮かべて笑うだけなのでしょう。
赤い花が水面をするするとすべってゆきます。
あなたのところへ届くこともなく、
このままどこかへと消えてゆくのでございましょう。

恋人

2002年12月6日
なにも見えないね
暗がりの中で歩く
僕たちは今
おそらくは
なにもない世界の中を
ゆっくりと歩く
たまに
君が走り出す
なんの目的もなく
なんの痛みもなく
たまに
僕は立ち止まる
なんの意味もなく
なんの
悲しみもなく

そうして離ればなれになってはじめて
世界にあふれているたくさんの
雑多なものが見えてしまって

あまりに多くのものが
見えてしまって

君をさがすことができない
一体
どこまで遠ざかってしまったのか
悲しみとか痛みとか
そんな陳腐なものが
突然
雨のように降ってきて

レンズ

2002年12月4日
ひかりよ
ぼくはここまで歩いても
どうしても 前が見えないんだ
みんな こんなにもまよわずに
くねくねとどこかを歩いているのに
ひかりよ
ぼくはどうしても
視力が低下してゆくので
せめて
15年前に買っておいた
重い眼鏡をかけたいんだ

ただ 残念ながらこの眼鏡
乱視はどうにもできないけれど

氷の棺

2002年12月2日
それは ささやかな場所
長い 長い時間をすごしてきた
たくさんの場所を転々として
長い 長い時間をすごしてきた
私は生まれて死んでゆく
そして私はまた生まれ
たくさんのきょうだいたちに囲まれて
たくさんの
魔物たちに囲まれて
そのあたたかな優しい血を
ほんのすこしいただいたりもして

それは ささやかな場所
時は流れ 100年に満たぬいくつもの
たくさんの私が渡り歩く
ひとりで生きていくけれど
人混みをさがして歩いていく
私がくりかえし くりかえし
変化してゆくために

足元にはたくさんの
氷の棺があるけれど

LOVERS

2002年9月30日
女は別れる努力をするために
男は続ける努力をするために

女は日々 優しくなってゆく
男は日々 残酷になってゆく

袋小路の その庭で

去る男

2002年9月28日
許してくれ
僕は強くなどない

まっしろいケーキのうえにのせた
とうがらしを食べると
イチゴの味がするんだ
嘘だと思うなら来てごらん

果てしない
裏側のこの家へ

もう
こんなところまで来てしまったよ
花がたくさん咲いている
ひとつひとつを踏みしめる
種を宿す前に 朽ち果てるだろうから
荒れた花畑が僕を見ている
どうしても
裏切らずにいられない僕は
君が持っていた刃を奪い
地に突き刺して進んでゆく
僕の左手には
消される時をただ待っている
赤い火のついた葉っぱの筒
ひとくち吸って煙を吐いて
花畑を超えるとほら
美しい 愛しい灰皿がそこにある

白磁の君
その手のひらに 赤い 黒い花を咲かせよう
待ちつづけたのは僕なんだ
それはもう 長い 長いあいだ
不愉快なんだ
その 山あり谷ありの段取りが
時がたてばいい思い出とやらになる感情の起伏が
僕はもっと簡単に
すべてを済ませてしまいたいのに

愛されることに飢えている?
果たして本当にそうなのか
僕が君を愛していなくても
君は僕から逃げられないよ

僕と君は似ていると
最近すこし思うのだけど

君の憎しみに撃たれると
心の底からゾクゾクするよ
そりゃもう どんな媚薬よりも
効果はてきめんさ

たとえば
カラフルな街で君を置き去りにしても
僕にはなんのおとがめもない
老若男女あふれる通りで君の手を離しても
僕はなにも悪くない

爪を切る音が耳につく
僕をさがしてさまよう前に
コンタクトレンズを正しく装着したらどうだろう
あざやかな音が耳につく
視力0.06の君と
どうやって暮らせというんだろう

見知らぬ女が僕の部屋を闊歩する
どう耐えてゆけというんだろう
僕の姿が
ほんとうに見えるかい?

僕はすこし旅に出る
帰らないかもしれないけれど

僕じゃない
ひどいのは君のほう

泣いている君を置いて僕はでかける
空は晴れてとても綺麗
そろそろ雲も遠ざかる季節で
とおりすぎる風がとても綺麗
君はまだ 僕の家で泣いている
どうにも手がつけられないから
僕はチェリージャムを置いてきた
空になるまで食べるといいよ
焼きたてのパンを並べてさ

帰ると君はまだ泣いている
そろそろうっとおしくなったから
その涙の量でもはかって
愛の深さをはかるとしようか

夜が来るよ
冷蔵庫の中にある瓶の中身は
天にも昇る濃厚な液体だから大丈夫さ
クラクラするだろう
どこまでも連れていくよ
これをひとつぶかじってごらん
なんのへんてつもない
ただの薬の味だから

逃げてごらん
体が動くなら

:::::::::::::::

このシリーズ題名はパロディです。
「道化服を着た骸骨」という大手拓次の詩があって、
西村朗が曲をつけた「道化服を着た死」という合唱曲がありますが、
私はこの歌がとても好きなんです。

ゆくあてもなく

2002年9月10日
美しく飾り立てたものが
かぎりなく けがれてゆく
かぎりなく よごれてゆく
怖ろしくてもう 口もきけない

どこへむかうのだろう
坂道が
どこまでも転がり落ちる
坂道が見える

また この坂をくだっていったとして
ここに戻れるのは いつ

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